2026年度(令和8年度)の行政書士試験の申込者数が発表されました。
申込者数は68,241人で、2025年度の63,845人から4,396人増加しました。前年比では約6.9%の増加です。
2024年度からの2年間では約14.1%増えており、行政書士試験の人気が高まっていることがうかがえます。
私は行政書士試験に合格しましたが、今回の申込者数の増加には興味を持ちました。
なぜ、行政書士試験を受験する人が増えているのでしょうか。
この記事では、過去10年間の申込者数の推移を確認するとともに、申込者が増加している理由を5つ考察します。
行政書士試験の申込者数の推移【2017〜2026年度】
まずは、過去10年間の行政書士試験の申込者数を確認してみましょう。
| 年度 | 申込者数 | 前年比 |
|---|---|---|
| 2017年 | 52,214人 | — |
| 2018年 | 50,926人 | -2.5% |
| 2019年 | 52,386人 | +2.9% |
| 2020年 | 54,847人 | +4.7% |
| 2021年 | 61,869人 | +12.8% |
| 2022年 | 60,479人 | -2.2% |
| 2023年 | 59,460人 | -1.7% |
| 2024年 | 59,832人 | +0.6% |
| 2025年 | 63,845人 | +6.7% |
| 2026年 | 68,241人 | +6.9% |
※申込者数と実際の受験者数は異なります。2026年度は試験実施前のため、申込者数のみを掲載しています。
この10年間の推移を見ると、次のような特徴があります。
- 2017〜2019年度は約5万人台前半で推移
- 2020〜2021年度に申込者数が大きく増加
- 2022〜2024年度は約6万人前後で推移
- 2025〜2026年度に再び増加し、直近10年で最多を更新
特に注目したいのが、2025年度と2026年度の2年連続の大幅な増加です。
単なる一時的なブームなのか、それとも行政書士という資格に対する評価が変わりつつあるのでしょうか。
行政書士試験の申込者数が増えた5つの理由
ここからは、行政書士試験の申込者数が増加している背景を考えてみます。
なお、以下は公表されている制度改正や社会の変化を踏まえた考察であり、各要因と申込者数増加との因果関係が統計的に確認されたものではありません。
理由① 行政書士法改正による資格の価値向上への期待
最初に挙げたいのが、2026年1月1日に施行された改正行政書士法です。
今回の改正では、行政書士の使命や職責が明確化されたほか、特定行政書士の業務範囲の拡大などが行われました。
主な改正内容は次のとおりです。
- 行政書士の使命と職責の明確化
- デジタル社会への対応に関する努力義務の規定
- 特定行政書士が代理できる行政不服申立ての範囲の拡大
- 無資格者による有償の書類作成業務について、報酬の名目を問わないことの明確化
- 業務制限違反等に関する両罰規定の整備
特に、特定行政書士の業務範囲の拡大は注目すべき改正だと思います。
従来は、行政書士自身が作成した申請書類などに関係する不服申立てが代理業務の対象でしたが、改正により、行政書士が作成できる書類に係る許認可等についても一定の範囲で代理できるようになりました。
また、無資格者による有償業務の制限についても、既存の規制の趣旨がより明確になりました。
今回の法改正をきっかけに、行政書士という資格の専門性や将来性が改めて注目された可能性があります。
ただし、法改正によってすべての行政書士の業務が拡大したわけではなく、実際の収入増加が保証されるものでもありません。
理由② 独立・副業志向の高まり
次に考えられるのが、独立や副業に対する関心の高まりです。
会社員として働いていても、転勤、配置転換、人事評価、定年退職など、将来の働き方にはさまざまな不確実性があります。
そのような中、会社以外にも収入を得る手段を持っておきたいと考える人は少なくないでしょう。
行政書士は、登録等の要件を満たせば独立開業を目指せる国家資格です。
会社員として働きながら試験に合格し、将来的に開業を検討するという選択肢もあります。
もちろん、資格を取得しただけで仕事が得られるわけではありません。営業力、専門知識、実務経験なども重要になります。
それでも、将来の働き方の選択肢を広げるという点で魅力的な資格だと感じます。
理由③ YouTubeやSNSによる資格の知名度向上
行政書士試験に関する情報は、以前と比較して入手しやすくなりました。
YouTubeでは試験対策講義や合格体験談が公開され、SNSでも受験生や現役行政書士が情報を発信しています。
特に、独学で合格した人の体験談や、行政書士として独立した人の発信は、これから受験を考える人にとって参考になります。
一方で、短期間での合格や開業後の高収入を強調する情報には注意が必要です。
合格までに必要な学習時間や、開業後の収入には個人差があります。
理由④ オンライン講座・生成AIによる学習環境の改善
現在は、法律の勉強を始めるための環境が非常に充実しています。
参考書だけでなく、オンライン講座、学習アプリ、無料動画など、多様な学習手段を利用できます。
さらに、生成AIを使って法律用語の意味や条文の考え方を確認することもできます。
もちろん、生成AIの法律解説には誤りが含まれることもあるため、条文や信頼できる教材との照合が必要です。
それでも、分からないことを自分のペースで調べられる環境は、独学者にとって便利です。
特に仕事や家事と両立しながら学ぶ社会人にとって、学習手段が増えたことは大きなメリットだと思います。
理由⑤ 法律系国家資格の入口としての人気
行政書士試験には、年齢、学歴、国籍などによる受験資格の制限がありません。
そのため、法律を専門的に勉強したことがない人でも受験できます。
試験では憲法、民法、行政法、商法などを学ぶため、法律の基礎知識を身につける機会にもなります。
また、行政書士試験で学んだ法律知識を、司法書士試験や司法試験・予備試験など、別の法律系資格の学習に活用することも考えられます。
ただし、行政書士試験の合格率は近年おおむね10〜15%程度であり、決して簡単な試験ではありません。
誰でも受験できることと、誰でも簡単に合格できることは別です。
受験者が増えると行政書士試験は難しくなる?
申込者数が増えると、合格が難しくなるのではないかと心配する人もいるでしょう。
しかし、行政書士試験は原則として、一定の得点基準を満たすことで合格できる試験です。
合格者数があらかじめ固定されている相対評価の試験ではありません。
そのため、申込者数が増えたからといって、直接的に合格が難しくなるわけではありません。
ただし、年度ごとの問題の難易度や受験者の得点状況によって、実際の合格率は変動します。
行政書士試験の合格者として感じること
私は行政書士試験に合格済みです。
勉強を通じて感じたのは、行政書士試験で学ぶ法律知識は、行政書士として開業する場合だけでなく、普段の生活や仕事にも役立つということです。
例えば、行政法を勉強することで、行政機関の処分や不服申立ての仕組みについて理解が深まります。
また、民法は契約や財産関係など、日常生活にも関係する法律です。
行政書士として開業する予定がなくても、法律を体系的に学習することには価値があると思います。
一方、法律の勉強には相応の時間と労力が必要です。
資格の人気が高まっているからという理由だけで受験するのではなく、資格取得後に何をしたいのかを考えておくことも大切でしょう。
まとめ|行政書士試験の人気は今後も続くのか?
2026年度の行政書士試験の申込者数は68,241人となり、直近10年間で最多となりました。
今回紹介した増加理由は、次の5つです。
- 行政書士法改正による資格の価値向上への期待
- 独立・副業志向の高まり
- YouTubeやSNSによる資格の知名度向上
- オンライン講座・生成AIによる学習環境の改善
- 法律系国家資格の入口としての人気
特に2026年の行政書士法改正は、行政書士制度にとって重要な変化だったと考えています。
今後も申込者数が増え続けるかは分かりませんが、独立やキャリア形成の選択肢として、行政書士に関心を持つ人は一定数いるでしょう。
行政書士試験に興味がある方は、試験制度や教材を調べて、自分に合った学習方法を検討してみてはいかがでしょうか。
参考資料
- 一般財団法人行政書士試験研究センター「行政書士試験結果の推移」
- 一般財団法人行政書士試験研究センター「令和7年度行政書士試験実施結果の概要」
- 日本行政書士会連合会「行政書士法の一部を改正する法律」の成立について
- 衆議院「行政書士法の一部を改正する法律案要綱」
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