2026年11月、JT(日本たばこ産業)のロシア資産がロシア政府の「一時管理下」に置かれたことが報じられました。
JTはロシアのたばこ市場で大きな事業を展開してきたため、今回のニュースを受けて、
「JT以外にもロシアに資産を持っている日本企業はあるの?」
と気になった投資家も多いのではないでしょうか。
結論からいうと、あります。
特に商社や資源開発会社を中心に、現在もロシアに関連する権益や事業を持っている日本の上場企業があります。
今回は、JT以外でロシアとの関係が比較的大きい日本株を調べてみました。

JTのロシア資産が一時管理下に
まず今回のニュースを簡単に確認しておきます。
2026年11月5日、ロシアのプーチン大統領がJTグループのロシア企業4社について、保有株式をロシア企業「Industrial Assets」の一時管理下に置く大統領令に署名したことが報じられました。
JTはロシア最大のたばこメーカーであり、ロシア事業の存在感が大きい企業です。
そのため今回の措置はJT株主にとって無視できないニュースです。
一方で、ロシアに関連する日本企業はJTだけではありません。
ロシアに事業・資産を持つ主な日本の上場企業
代表的な企業をまとめると、次のようになります。
| 企業 | 証券コード | 主なロシア関連事業 | ロシアリスク |
|---|---|---|---|
| JT | 2914 | たばこ製造・販売 | 非常に高い |
| 三井物産 | 8031 | サハリン2、Arctic LNG 2など | 高い |
| 三菱商事 | 8058 | サハリン2 | 高い |
| JAPEX | 1662 | サハリン1 | 高い |
| INPEX | 1605 | SODECO経由のサハリン1 | 中程度 |
| 伊藤忠商事 | 8001 | サハリンなどの資源事業 | 中程度 |
| 住友商事 | 8053 | ロシア現地企業・事業 | 中程度 |
| 丸紅 | 8002 | ロシア国内拠点を維持 | 低~中 |
| コマツ | 6301 | 建機関連拠点・会社 | 中程度 |
ただし、重要なのは「ロシアに会社があるか」だけではありません。
実際の株価への影響を見る場合は、
ロシア事業が利益全体のどれくらいを占めているのか
を見る必要があります。
三井物産(8031)
JT以外で特に注目したいのが三井物産です。
三井物産はロシア極東の大型LNGプロジェクト「サハリン2」に出資しています。
三井物産のロシア法人の公式サイトによると、サハリン2への出資比率は12.5%です。
さらに「Arctic LNG 2」にもJOGMECと共同で参加しています。
三井物産のロシア関連事業はJTとは性質が異なります。
JTがロシア国内の消費者向け事業を大規模に展開しているのに対し、三井物産は日本のエネルギー安全保障にも関係するLNG権益を保有しています。
そのため、単純に撤退すればいいという事業ではありません。
一方で当然ながら、ロシア政府による資産管理や制裁強化などの地政学リスクは残ります。
三菱商事(8058)
三菱商事もサハリン2に参加しています。
現在のSakhalin Energy LLCに対する持分は10%です。
三菱商事は2024年度末時点で、ロシア事業に関する資産総額を約1,408億円と開示していました。
サハリン2は日本にとって重要なLNG調達先でもあります。
そのため三菱商事の場合も、
「ロシアリスクがある=すぐ撤退」
という単純な話ではありません。
ただし今回JTに対して行われたような措置が他の日本企業に拡大する可能性については、今後注意する必要があります。
JAPEX(石油資源開発・1662)
JAPEXもロシアとの関係が比較的深い企業です。
JAPEXは「サハリン1」に参加するSODECO(サハリン石油ガス開発)に15.285%出資しています。
サハリン1では現在も原油・天然ガスの生産が行われています。
JAPEXの資料では、SODECOがロシア側の新会社に30%出資し、JAPEXの間接的な持分は約4.59%となっています。
JTほど会社全体に占めるロシア事業の割合が大きいわけではありませんが、資源開発企業だけにロシア情勢はチェックしておきたい材料です。
INPEX(1605)
INPEXもSODECOに出資しています。
INPEXの公式サイトによると、SODECO株式の約6.08%を保有しています。
つまりINPEXも間接的にサハリン1との関係があります。
ただしINPEXはオーストラリアのイクシスLNGやインドネシアなど世界中に巨大な資産を保有しています。
したがって会社全体で見れば、ロシアだけに依存している企業ではありません。
JTなどと比較すれば、ロシア問題による会社全体への影響度は限定されやすいと考えられます。
伊藤忠商事(8001)
伊藤忠商事も公式サイト上で、ロシアのサハリンや東シベリアの上流資源事業に参画していることを明記しています。
また、現在もモスクワ駐在員事務所が掲載されています。
ただし伊藤忠商事も事業ポートフォリオは非常に分散されています。
繊維、食料、住生活、情報・金融など多くの事業を展開しているため、ロシアだけで会社全体の業績が大きく変わる構造ではありません。
住友商事(8053)
意外とロシアとの関係が残っているのが住友商事です。
住友商事のCIS法人の公式サイトを見ると、
- 建設機械関連
- トヨタ車販売
- 農薬
- 木材加工
- 石英関連
など複数のロシア企業が現在もグループ会社として掲載されています。
かなり幅広い事業を保有していることが分かります。
もちろん住友商事全体の規模からするとロシア事業は一部ですが、資産接収リスクという観点では確認しておきたい企業です。
丸紅(8002)
丸紅も現在、モスクワ、ウラジオストク、ハバロフスクに拠点を掲載しています。
ただし公式サイトでは、
「新規ビジネス凍結中」
と明記されています。
つまりロシアから完全撤退したわけではないものの、新規投資を積極的に進めている状況でもありません。
JTやサハリン権益を保有する商社と比較すると、直接的なロシアリスクは相対的に小さいと考えられます。
コマツ(6301)
建設機械大手のコマツにもロシア関連拠点があります。
コマツの拠点情報では、ロシアに建設・鉱山機械関連の会社や金融会社などが掲載されています。
また2025年3月時点の資料では、
- Komatsu Mining Corp.
- Komatsu Manufacturing Rus
- KRANEKS International
などロシア国内の製造関連拠点が記載されています。
したがって製造業ではコマツもロシア関連企業としてチェックしておきたいところです。
JTと他社ではロシアリスクの意味が違う
ここが重要です。
同じ「ロシアに資産を持つ企業」でも、JTと商社ではかなり状況が異なります。
例えば三井物産や三菱商事の場合、ロシア関連資産は主にLNGなどの資源権益です。
しかも日本のエネルギー供給にも関係します。
一方JTの場合はロシア国内で大規模なたばこ事業を展開しています。
そのため今回のように事業会社そのものが一時管理下に置かれると、投資家からすると非常に分かりやすいリスク材料になります。
次に警戒されるのは商社株?
今回のJTのニュースを見て、
「次は三井物産や三菱商事なのでは?」
と心配する投資家もいるかもしれません。
可能性を完全に否定することはできません。
実際、ロシア政府はこれまで欧米企業の資産を一時管理下に置いた例があります。今回のJTへの措置もその延長線上として見ることができます。
ただしサハリン2はロシア側にとっても外貨を稼ぐ重要なエネルギープロジェクトです。
さらに日本へのLNG供給というエネルギー安全保障上の事情もあります。
したがって、
「JTが対象になったから、日本企業のロシア資産がすべて接収される」
と考えるのはさすがに飛躍があります。
現時点では個別企業ごとに見ていくべきでしょう。
投資家としてチェックしたいポイント
今回のニュースを受けて私がチェックしたいのは次の3点です。
1.ロシア政府の措置がJTだけで終わるか
最も重要です。
他の日本企業にも同様の措置が広がれば、ロシア関連資産を持つ企業にリスクプレミアムが乗る可能性があります。
2.サハリン1・サハリン2への影響
三井物産、三菱商事、JAPEX、INPEXなどに関係してきます。
日本のLNG・原油調達にも影響するため、企業単体だけの問題ではありません。
3.実際に業績への影響が出るか
株価がニュースだけで大きく下落しても、実際の利益への影響が小さければ投資機会になるケースがあります。
逆に資産価値の毀損や配当停止などが発生すれば、業績への影響を再計算する必要があります。
まとめ
JTのロシア資産が一時管理下に置かれたことで、改めて日本企業の「ロシアリスク」が意識されることになりました。
ただ、ロシアに関連する日本企業はJTだけではありません。
特に、
三井物産・三菱商事・JAPEX・INPEX
などはサハリンの資源プロジェクトを通じて現在もロシアとの関係があります。
住友商事やコマツなどにもロシア関連拠点があります。
一方で、企業によってロシアへの依存度は大きく異なります。
そのため「ロシアに資産がある」というだけで売買を判断するのではなく、
ロシア事業が企業全体の利益・資産・キャッシュフローの何%を占めるのか
を確認することが大切でしょう。
今回のJTの件が日本企業全体に波及するのか。
それともJT固有の問題として収束するのか。
現時点ではまだ実体経済や他の日本企業の事業に大きな影響が出たわけではないため、過度に悲観するのではなく、今後のロシア政府の対応を冷静に見極めたいところです。
※本記事は特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断は自己責任でお願いいたします。



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